微小信号測定・ロックインアンプ

Micro Signal

微小信号測定・ロックインアンプの受託開発

アニモテックでは、微小信号を測定するためのロックインアンプ、アナログ回路、微小信号測定装置の受託・カスタム開発に対応します。
アナログ回路設計からA/D変換、FPGAによる信号処理、PC・Webアプリ連携まで、用途に応じて一貫して開発します。



ロックインアンプとは

ロックインアンプ(ロックイン増幅器とも呼ばれます)は、微小な周期信号から、基準信号と同じ周波数の成分を選択的に検出し、その振幅と位相を測定する装置です。

ロックインアンプでは、入力信号と基準信号を掛け合わせる同期検波を行います。
測定したい信号と基準信号の周波数が一致すると、目的の信号成分は直流に変換されます。
以下では、この仕組みを三角関数で説明します。

測定したい信号を A·sin(ωt+φ)、同相の参照信号を sin(ωt) とします。
Aは測定信号の振幅、ωは角周波数、φは参照信号に対する位相差です。

測定信号と参照信号を掛け合わせると、三角関数の積和公式から次のようになります。

A·sin(ωt+φ)·sin(ωt) = (A/2)cos φ − (A/2)cos(2ωt+φ)

第1項の (A/2)cos φ は直流成分、第2項は角周波数 2ω の交流成分です。
乗算後の信号をローパスフィルタに通して 2ω 成分を減衰させると、同相成分 X として次の値が得られます。

X = (A/2)cos φ

さらに、同相参照信号と90°の位相差を持つ直交参照信号 cos(ωt) を使って同じ処理を行うと、直交成分 Y が得られます。
これが同相・直交(I/Q)2相の同期検波です。

Y = (A/2)sin φ

この理想モデルでは、X と Y から入力信号の振幅 A と位相 φ を次のように求められます。

A = 2√(X2+Y2)
φ = atan2(Y, X)

このような同期検波を利用することで、ロックインアンプには次のメリットがあります。

  • 狭い測定帯域を構成しやすい
    測定したい周波数の成分を直流付近へ変換するため、ローパスフィルタを使って狭い測定帯域を構成できます。
    元の信号周波数に対して非常に狭いバンドパスフィルタを設ける方法と比べ、狭い測定帯域を実現しやすくなります。
    これにより、測定対象の周波数から離れた周波数成分の影響を抑えられます。
  • 発振周波数の変化に追従できる
    測定対象を駆動する信号と同じ信号を基準として使用すると、発振周波数が変化した場合も、基準信号と測定信号の関係を保ったまま同期測定できます。
    そのため、一定の周波数だけを通す固定フィルタよりも、発振周波数が変動する測定に適しています。
  • 振幅と位相を測定できる
    同相成分Xと直交成分Yを求めることで、測定信号の振幅と、基準信号に対する位相差を測定できます。

※ 上式は、参照信号の振幅と乗算器のゲインを1とした理想モデルです。
実際のロックインアンプでは、内部のゲイン、正規化方法、ピーク値・実効値の定義などにより換算係数が異なる場合があります。

図:ロックインアンプの2相同期検波(I/Q検波)の原理

図:ロックインアンプの2相同期検波(I/Q検波)の原理



微小信号測定で重要な低雑音設計

微小信号を正確に検出・計測するには、低雑音のオペアンプやADCなどを選ぶだけでは不十分です。
センサの出力レベルやインピーダンスに合わせた増幅回路(アナログフロントエンド)、必要な信号帯域、電源ノイズ、基板レイアウト、グラウンド、シールド、外来ノイズ、A/D変換器や基準電圧の性能まで含めて設計する必要があります。

特に、測定帯域を必要以上に広くすると、その帯域内のノイズも増えます。
測定したい信号の周波数や応答速度を踏まえ、前段の微小信号増幅回路とフィルタの帯域を適切に設定することが重要です。

また、微小信号測定では温度変化によるオフセットやゲインの変動も無視できません。
低ドリフト部品の選定、基準電圧やセンサ駆動回路の構成、校正、必要に応じた温度補償まで含めて検討します。



微小信号測定で考慮するノイズ

微小信号測定では、回路やセンサが発生するノイズと、外部から混入する干渉の両方を考慮する必要があります。

熱雑音抵抗などの内部で電荷が熱運動することで発生します。
外部から電流を流していない抵抗にも発生し、開放端に現れる雑音電圧は、抵抗値、絶対温度、測定帯域幅が大きいほど増加します。

ショットノイズ電子や正孔などの電荷が、PN接合などの電位障壁を不規則に通過することで発生します。
ダイオード、トランジスタ、フォトダイオードなど、直流電流が流れる素子で問題になります。

1/fノイズ(フリッカノイズ)低い周波数ほど大きくなるノイズです。
オペアンプ、トランジスタ、センサなどで発生し、直流付近や低周波の微小信号を測定するときに影響が大きくなります。

バーストノイズ(ポップコーンノイズ)電圧や電流が不規則に段差状に変化する低周波ノイズです。
同じ型番の部品でも、個体によって発生状況が異なる場合があります。

アバランシェ雑音PN接合が逆方向の降伏状態で動作するときに発生します。
微小信号を扱う入力回路では、保護素子などが意図せず降伏状態にならないように設計します。

外来ノイズ・干渉(EMI)電源の50/60 Hz、スイッチング電源、モーター、デジタル回路のクロック、無線機器などから混入します。
ケーブル、基板配線、電源、グラウンドを通じて入り込むため、シールド、差動入力、配線、基板レイアウトを含めた対策が必要です。
内部で発生するランダムノイズとは区別して考えます。


熱雑音と測定帯域幅

抵抗の開放端に現れる熱雑音電圧の実効値は、次の式で表されます。

Vₙ = √(4kTRB)

Vₙ:熱雑音電圧の実効値、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、R:抵抗値、B:測定帯域幅(厳密には等価ノイズ帯域幅)

熱雑音電圧は測定帯域幅の平方根に比例します。
帯域幅を100倍にすると、熱雑音電圧は約10倍になります。
そのため、微小信号測定では、必要な応答速度を確保しながら、測定帯域を必要以上に広げないことが重要です。

例えば、室温約290 K(約17 ℃)、抵抗値10 kΩ、帯域幅10 kHzの場合、熱雑音電圧は約1.3 µVrmsになります。

熱雑音を整合負荷(信号源と同じ抵抗値で、最大の電力を取り出せる負荷)へ取り出せる利用可能な電力で表すと、次の関係になります。

Pₙ = Vₙ²/(4R) = kTB

室温約290 K(約17 ℃)では、熱雑音の利用可能電力密度は約−174 dBm/Hzです。
これは、抵抗の開放雑音電圧 Vₙで表した熱雑音を、整合負荷で取り出せる電力に換算したものです。

室温約290 Kの場合、帯域内の熱雑音電力は次の式で表せます。

Pₙ [dBm] = −174 + 10 log₁₀(B) (B:帯域幅 [Hz])

帯域幅1 kHzでは約−144 dBm、10 kHzでは約−134 dBmとなります。



早期デジタル化とFPGAによる信号処理

微小信号測定では、入力保護、信号増幅、帯域制限など、ADCへの入力に必要なアナログ処理を行ったうえで、可能な限り早い段階で信号をデジタル化することが重要です。

アナログ信号のまま扱う区間が長く、多段の増幅回路やフィルタを通過すると、外来ノイズの影響を受ける機会が増えるほか、抵抗、コンデンサ、オペアンプなどの部品ばらつきや温度変化によって、ゲイン、オフセット、周波数特性が変化する場合があります。

早い段階でADCによりデジタル化し、その後の処理をFPGAやCPUで行うことで、次のメリットがあります。

  • アナログ信号経路を短くできる
    アナログ信号として扱う区間や回路段数を減らすことで、外来ノイズやアナログ回路の特性変動の影響を受ける範囲を小さくできます。
  • 部品ばらつきや温度ドリフトの影響を抑えやすい
    デジタルフィルタや演算処理は数値係数によって特性が決まるため、抵抗やコンデンサのばらつき、温度変化による特性変動の影響を受けにくく、再現性のある処理を実装できます。
  • 信号処理を柔軟に変更できる
    フィルタ特性、時定数、演算方法などを、回路部品を交換せずにFPGAやソフトウェアの設定で変更できます。
  • 複数チャンネルをリアルタイムに処理できる
    FPGAを使用することで、複数チャンネルのフィルタ処理や演算を並列に実行できます。

ただし、早い段階でデジタル化しても、測定系全体からアナログ回路の影響がなくなるわけではありません。
センサ、入力保護回路、増幅回路、ADC、基準電圧、クロックなどには、ノイズ、部品ばらつき、温度依存性が残ります。
そのため、必要なアナログフロントエンドについては、低雑音・低ドリフト設計や校正も含めて検討します。



測定周波数・帯域・チャンネル数に合わせたカスタム開発

アニモテックでは、センサからの微小信号取得、低雑音増幅回路、アナログフィルタ、A/D変換、FPGA・CPUによるデジタル信号処理、データ記録、PCアプリとの連携まで、用途に応じて開発します。

ロックインアンプについても、測定周波数、信号レベル、必要な帯域、測定速度、チャンネル数、使用環境などに合わせたカスタム開発に対応します。
市販のロックインアンプでは合わない周波数、チャンネル数、サイズ、I/O、組込み条件がある場合もご相談ください。



対応できること

  • 微小信号の検出・増幅
  • 低雑音アナログ回路(アナログフロントエンド)
  • 同期検波・ロックイン検出
  • A/D変換回路
  • FPGAによるデジタルフィルタ、振幅・位相演算
  • センサや測定対象に合わせた信号処理
  • データ記録、PCアプリ、Webアプリとの連携




カスタム開発のご相談

微小信号の測定回路やロックインアンプのカスタム開発について、仕様が固まっていない段階でもご相談いただけます。
測定周波数、入力信号レベル、必要帯域、応答速度、位相精度、チャンネル数、使用環境などを確認し、回路構成や信号処理方法を検討したうえで個別にお見積りします。

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